《会員紹介》 「甘草(かんぞう)の里づくり」 山梨県甲州市
2016年10月31日
「甘草(かんぞう)の里づくり」 山梨県甲州市
JR中央線塩山駅の北口を出ると二段の突き上げ屋根を設けた切妻造の大きな屋敷が目に飛び込んできます。「甘草屋敷」と呼ばれるこの建物は、江戸時代に薬用植物である甘草を栽培して幕府に納めていた歴史があり、建物は、重要文化財に指定され、その沿革がわかる資料「甲州甘草文書」も現存しています。その甘草屋敷を中心とした歴史と文化を改めて見直すため本市では平成25年から「甘草の里づくり」事業を展開しています。
福岡県の新日本製薬㈱と協定を結び、甘草屋敷由来の苗の提供、栽培指導を受け、甘草屋敷内及び市内各所の試験圃場で甘草の試験栽培を行っています。
古くから市の中心にある甘草屋敷、甘草への市民の関心は高く、栽培農家はもちろんのこと地元住民、高校生など多くの市民が苗の植付け作業や収穫作業に関わっています。そのなかでも市民を中心に甲州市甘草活用研究会を立ち上げ、「甘草の里づくり」に向けて様々な角度から参画していただいています。
この甘草は、根や根茎に含まれるグリチルリチンが薬用成分であり、医薬品の原料として約7割の漢方処方に配合されています。また、甘味料などの食品添加物として用いられることも多く、入浴剤、化粧品、石鹸等にも使われています。
植付けから収穫までは1年半ほどの時間がかかり、苗の養生から根付くまでの水遣り、農薬、除草剤、消毒薬の類は使用していないため草取り作業は欠かせません。植付けは1本ずつ手で植え込みましたが、根や根茎が四方八方に伸びたため収穫は、重機を使って一気に収穫しました。収穫した甘草は、そのまま使用できるわけではなく、洗浄、乾燥、滅菌、チップ化、粉末化、エキス末化などの加工が必要でその後商品化されます。
種苗の安定的な確保、栽培技術の確立、加工から商品化までの流通経路の確立など課題はまだまだ多く、その課題をひとつずつクリアしていかないと「甘草の里づくり」は完結しません。
今後は甘草屋敷の歴史、文化を大切にしながら利用価値の高い甘草を薬用はもちろんのこと薬用以外の商品にも幅広く活用されればと考えています。
植えつけの様子
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